不妊症の男性因子と原因

1992年に人類の精子数が半減しているというショッキングな不妊症報告をカールセンらがしました。

これは過去の論文に出ていた精子数のデー夕を50年前まで懇って調べたものです。人類存亡の危機ということで、社会的にも大きな衝撃を与え、その後様々な追試や検討がなされています。

正当性に疑問が提出されたり、減少は認められないというデータも出されています。

少し余談ですが、研究成果の発表は何か新しいことがないと注目されません。精子の数に変化がなかったと報告しても、普段なら見向きもされませんが、カールセンの報告のインパクトが大きかったため、「増えた」「減った」「変わらない」とデータが飛び交い、学会も喧々言々です。

不妊症でない方の精子を多数、しかも数十年以上も前にさかのぼって調べるのは困難です。ところが、日本では慶応大学産婦人科が提供者の年齢も比較的そろった人工授精用精子の貴重なデータを持っていました。

吉村教授らの解析の結果、半減まではいかないが減少傾向はあると意義ある報告をしています。

精子の質に問題があると妊娠は難しくなります。この場合を男性因子による不妊症といいます。よくみられるのは、正常者と比べ精子の数、運動率がやや低下している場合ですが、重度の場合には、精子が作られる過程や精子の輸送路に障害があり、専門医による詳しい検査が必要となります。

女性側の検査には多少痛みを伴うものもありますが、男性側のスクリーニング検査は比較的容易にでるものが多く、最初に行ってしかるべきです。

■男性因子の診断

精液検査をする場合、まず容器から試験管に移し観察します。健康男子の精液は、白色不透明で、精液量は2~4ミリリットルです。

次に顕微鏡検査に移ります。精子数は1ミリリットルあたり約1億が平均ですが、5000万以上を正常としています。運動率は通常80%以上が正常ですが、運動性も大切で、活発な直進運動をよしとします。

その場でグルグル回っているだけでは十分とはいえません。奇形精子もある程度はしかたありませんが、その率は15%以下でないといけません。白血球が混ざっているとなんらかの炎症が起きていることを疑います。

精液の検査は三日以上の禁欲期間をあけることが肝心ですが、採取の方法も重要です。コンドームに採取すると精子が死滅してしまうので、用手法で直接容器に採取します。

二時間以内に検査します。精子は数が頼みのところがあり、精子数が2000から400万/ミリリットル以下になると、自然には妊娠しにくくなります。精子数1000万/ミリリットル以下ではさらに難しく、人工授精の治療をしても妊娠させることはかなり困難です。

精子を作るにもホルモンの働きが大切ですが、ストレス等の影響を受けると、ホルモン分泌も精子の数も変動します。

一回の検査では正確な情報が得られないので、日時を変えて数回くりかえすのが普通です。また人の目が頼りの顕微鏡では運動性や運動率の客観的評価ができにくいということで、一個の精子がどのように運動したかまで判読する電子機器も開発されています。